自分の施術・運営スタイルを事前にしっかり把握しておくこと
現調時施主様とご一緒させて頂いた際、意外と把握されていないのが施術室一室当たり最低限必要となる大きさです。導入予定の施術ベッドの大きさ、ベッドの周り360度どこからでも施術できるようにするのか、頭または足元からだけ施術できればOKなのか、ベッドの左または右側からだけ施術できればOKなのか、施術室はカーテンで仕切ればOKなのか、間仕切壁を立てて完全個室にしたいのか、治療機器は施術室内に置くのか移動式にするのか…等々、予め自分の施術スタイル、最低限の施術室の大きさを把握しておくことが大事です。
施術室一室当たりの大きさはレイアウトの大前提です。
しっかり事前に将来も見据えて決めておきましょう。
受付・待合室の大きさ
受付でもある程度業務を行うのか、簡単なお客様対応のみかによって受付の形状、大きさも変わってきます。
じっくり座って様々な業務を行う場合はそれなりの大きさ、広さが必要です。
様々な業務やカルテの保管などは別室で、受付には誰も常駐せずあくまで簡単なお客様対応のみと言う場合は椅子など設けず立ち式のカウンターのみ配置でいいかも知れません。
また、施術者数やベッド数、電気治療機器の数などにより施術院として一回で受け付けられるであろう患者数を勘案した上で待合室の広さも決定します。但し店舗レイアウトはどこかを広くすれば別のどこかを犠牲に狭くせざるを得ず、どこまで行ってもそれぞれのスペースの綱引きとなってしまう為、余程広い物件で無い限り、ある程度最低限のスペースになってしまうのは致し方ないかも知れません。
バックヤード
様々な事務作業を行ったり、従業員の方が休まれたり、施術着に着替えたり、食事を摂ったり洗濯したりと施術外の様々な作業を行えるのがバックヤードや事務室です。施主様によっては受付で全て作業するし、着替えは空いている施術室使うから要らないと仰る場合もございますが、必要な場合はそこに最低限設置したい家具、大きさをある程度把握しておくことが大事です。実際に出来上がってから機能不足に気付いても遅いですので。
動線
従業員やお客様が店内を移動する場所を動線と言います。この動線を効率良く配置しないとお店の効率も大きく落ちてしまいます。上述の受付、施術室、バックヤードを十分な広さで配置した上で、それぞれにアクセスしやすい効率の良い動線が確保されなければ意味がなくなってしまいます。現調、レイアウト検討時にはこの動線にも注意して検討してみて下さい。
水周り
トイレ、洗面、キッチンなど、お店ではお水を使う機会が多いです。その為水周り設備の増設・移設がレイアウトの肝となる場合も多いです。
しかしながら基本的に水周りの位置はいじれないことが殆どです。給水・給湯管は殆どの場合、後からでもどんな位置にでも持っていくことが可能ですが、排水管は勾配が必要なので後から位置を大きく変えることは一般的には難しいです。
当然物件の状況や造りによって何とかなる場合も多々ございますが、基本的には大きく動かすことは避けた方が賢明だと思います。
また、この水周り工事に関しては、工事を請け負う工務店や設計者の経験値によりできるできないが決まってしまうこともあります。どうしても無理と言われても、別の業者に相談したらあっさりできたなんてこともあります。レイアウト上、お店の運営上どうしても譲れない時は別の業者に意見を聞くことも必要かと思います。
空調機器など設備機器について
賃貸物件には予めエアコンや換気扇などの空調機器、ミニキッチンなどの衛生機器、蛍光灯などの照明機器などが設置されていることも多いです。既に設置されている場合、これらの設備機器が物件の契約に含まれているものか、前の賃借人の残置物扱いなのか確認が必要です。
残置物扱いの場合は故障しても大家さんで直してはくれないので、引き続き使用できそうか良く確認すること。最初の纏まった工事の時に交換した方が後々の営業に支障を来しませんし、費用も抑えられる場合が多いです。
これらの設備機器が予め全くついておらず、新規で取付ける必要がある場合は配管・配線ルートやスイッチの位置なども考慮しておくこと。特にエアコンの場合は室外機をどこに置いていいか、ベランダか地面か屋上か、そこまでの配管(冷媒管)ルートはあるか、配管用の穴が外壁に空いているか、無い場合は穴を空けていいか確認すること。いざ契約を済ませ工事に入ったはいいものの、エアコン設置できる場所が全く効率の悪い位置しか無かったり、設置工事に思いの外費用が掛かったりすることがあったりしますので注意が必要です。
※木造・鉄骨造の場合は簡単に外壁を抜けることが殆ど。構造的に殆ど問題もないので比較的簡単に許可が出ることが多いですが、鉄筋コンクリート造の場合は構造的に問題になって来ることが多く、穴あけの許可が下りない場合が多いです。
整骨院や鍼灸院の場合、窓の開放面積の大きさ・換気扇位置の確認は必ず行って下さい。施術予定スペースから遠くにしか無い場合、天井裏をダクト配管して既設に結べるか、または近くの外壁を抜いて設置できるかどうか確認が必要となります。保健所の開業許可に関わる問題ですので、必ず確認してください。
いずれにせよ水周り・空調とも、いじるとそれなりに高額な費用が掛かる為、既存設備があるならなるべく既設のままいじらないことを前提にレイアウトすることが重要です。
床の状態
既に内装が仕上がっている場合はあまり問題となりませんが、床の表装材が無く下地のみの状態の場合は床のレベルを良く見ることが重要です。
平らに見えても光を当てると波打ってたり、部屋内で天井の高さが4~5cm違うこともざらにあります。特にコンクリート打ちっ放しの床はきちんと平らにレベル取れているところは殆ど無いと思った方が無難です。
天井高は十分か
一般的な住宅の天井高は2m40cm程度(仕上がりで)、商業施設で2m50cm程度です。経験則で言いますと、最低でも2m30cm程度はあった方がよろしいと思います。それ以下ですと圧迫感が出てしまいます。
また現調時天井高2m40cmあって十分だと思っても、現状床がボコボコで、さらに衛生設備の増設・移設の為に床を15cm上げなくてはならないなんて場合は最終的な天井高が2m25cmとなってしまい、大分低くなってしまいます。その後の必要な工事も含めて検討してください。
因みに天井が高い方が開放感はありますが、あまり高すぎるとクロス貼りの工事代が高くなったり、天井照明が施術位置までしっかり届かないなど支障が出るかも知れませんので注意が必要です。スケルトン物件で最初から天井を作らなくてはならない物件など、高くても2m70cmぐらいに抑えられた方がよろしいかと思います。
後は天井からの出幅がでかすぎる躯体梁はレイアウトの支障になるかも知れませんので、天井設置機器・施術室の位置関係をよく考えてレイアウトすることが注意です。
消防設備・防火区画など
建築基準法、消防法により物件・レイアウトによっては工事前に防火対象物工事開始届、工事後に防火対象物使用開始届、及び法令順守の為に行った消防設備の設置届などの各種申請・届が必要です。特にデイサービスやクリニックの場合はこれらの申請書の受領印の入った控えや消防検査証が開業申請に必要となります(物件や自治体により例外あり)。この為、物件選びの際必ずビルオーナー、管理会社または当該物件の防火管理責任者に事前確認することが必要です。
特にデイサービスやクリニックなどの介護・医療施設の場合、建物の総延べ床面積に応じ全館自動火災報知機の設置が必要となります。今までこのような用途に使われていなかった物件の場合、自動火災報知機の設置が無い物件もあります。このような物件の場合開業自体が不可能か、または全館自動火災報知機を数百万も掛けて全て施主様の自己負担で設置することが必要となります。
まずは建物自体が開業したい業種に適しているか、最低限の法令をクリアしているか事前の確認が重要です。
※物件によっては消防設備に関してはビルが契約している防災設備会社での工事が契約の条件となる場合がございます。この場合工事金額は言い値となってしまう為、契約前にこのような縛りがあるか、ある場合は大体の金額を聞いておくことも重要です。
大家さんとの交渉
大家さんとの交渉で目先の家賃交渉はしても、意外と皆さんしていないのがフリーレントや内装・設備機器の工事の交渉です。物件を借りる際、工事期間の2か月間は賃料無料のフリーレントにしてくれとか、床材やクロス貼りは大家さんで負担してくれなど、交渉してみると意外とOKしてくれる大家さんも多いです。お互い人間ですのであまり過剰な要求をするのはNGですが、一度は言って見るのもいいかも知れません。但しあまりしつこく要求しないことが重要です。
その他
施術院の開業には色々と細かい制約や法令があります。その為最も大事なのが関係機関への事前の確認です。ある程度レイアウトが固まった時点で管轄の役所、保健所、消防などに図面を持っていきよく相談することが重要です。
着工後、ある程度工事が進んだ時点、またはもう既に完成してしまった時点で多くのダメ出しをされても後の祭りとなります。工事完了後のやり直しは当初の纏まった工事より時間もお金も掛かります。
くれぐれも事前相談を疎かにしないようご注意ください。
施術院施工.netでは物件選びに際して
上記を踏まえた適切なアドバイスをさせて頂きます
迷ったら是非一度ご相談ください!